『イン・ザ・メガチャーチ』感想|人はなぜコミュニティに所属し、物語を信じるのか

本の感想

本の概要

『イン・ザ・メガチャーチ』は、朝井リョウ氏による長編小説です。

物語の舞台となるのは、現代社会で急速に拡大する「ファンダム経済」です。

アイドルグループの運営に携わる男、推し活に居場所を見出していく大学生、かつて舞台俳優の熱心なファンだった女性という3人の視点を通して、人々が何に熱狂し、何を信じ、どのように行動していくのかが描かれます。

推し活、SNS、コミュニティ、マーケティング、承認欲求。

一見すると現代的なテーマを扱った作品ですが、その本質はもっと普遍的です。

人間はなぜ何かを信じるのか。

なぜコミュニティを求めるのか。

そして、なぜ「物語」に熱狂するのか。

そんな根源的な問いを投げかける作品です。

読むべき人

・推し活をしている人

・SNSとの距離感を考えたい人

・コミュニティ運営に関わる人

・マーケティングに興味がある人

・『サピエンス全史』が好きな人

・人間の集団心理に興味がある人

個人の感想

この小説を読んでまず感じたのは、「これは推し活の話ではなく、人類の話だ」ということです。

作中では俳優やアイドルのファンコミュニティが描かれています。

熱狂的に応援し、お金を使い、時間を使い、人生の一部を捧げる。

外から見れば、その姿は少し狂気的に見えるかもしれません。

しかし、読んでいるうちに気づきます。

それは決して特別な人たちだけの話ではないということです。

現代社会では誰もが何らかのコミュニティに所属しています。

プロ野球チームのファン。

資格取得の勉強会。

会社。

地域社会。

趣味のサークル。

SNS上のコミュニティ。

私自身もそうです。

中小企業診断士の勉強を通じたつながり。

建築や仕事を通じたコミュニティ。

読書を通じた交流。

規模は違っても、人はどこかに所属しながら生きています。

そう考えると、この作品で描かれる熱狂は決して他人事ではありません。

そして、この小説を読みながら思い出したのが『サピエンス全史』でした。

著者のユヴァル・ノア・ハラリは、人類発展の大きな転換点として認知革命を挙げています。

認知革命によって、人類は実際には存在しない概念を共有して信じられるようになりました。

国家。

会社。

宗教。

貨幣。

法律。

これらは物理的に存在するわけではありません。

しかし、多くの人が共通して信じているからこそ社会が成り立っています。

『イン・ザ・メガチャーチ』を読んでいると、その認知革命は現代でも続いていることを強く感じます。

アイドルもそうです。

スポーツチームもそうです。

企業理念もそうです。

私たちは様々な「物語」を共有しながら生きています。

そして、その物語に感情を動かされ、お金を使い、行動しています。

本作が恐ろしいのは、その構造を推し活という身近なテーマで可視化していることです。

また、本作では熱狂する側だけではなく、熱狂を作り出す側の視点も描かれています。

どうすれば人は熱狂するのか。

どうすればコミュニティは拡大するのか。

どうすれば人は物語を信じるのか。

これはマーケティングの世界にも通じる話です。

商品を売ること。

ブランドを作ること。

ファンを増やすこと。

これらも本質的には同じ構造の上に成り立っています。

だからこそ、この作品は推し活を描いた小説でありながら、マーケティングやコミュニティ運営の本質を描いた作品にも見えました。

一方で、所属すること自体は悪いことではありません。

むしろ人間にとって必要なことだと思います。

問題は、自分が何を信じているのかを自覚しているかどうかです。

なぜそのコミュニティに所属しているのか。

なぜその人を応援しているのか。

なぜその考え方を信じているのか。

そうした問いを持ち続けることが大切なのだと感じました。

『イン・ザ・メガチャーチ』は推し活やファンダムを描いた小説でありながら、人間という生き物の本質を描いた作品です。

読後には、自分自身がどんな物語を信じて生きているのかを考えたくなりました。

おすすめ度

★★★★★(5/5)

こんな人におすすめ

・推し活をしている人

・コミュニティ運営に関わる人

・マーケティングを学んでいる人

・SNS時代の人間関係に興味がある人

・『サピエンス全史』が好きな人

・人間の本質について考えたい人

推し活やファンダムを題材にしながら、人類がなぜ物語を必要とするのかを描いた一冊。読後には、自分自身が信じているものを見つめ直したくなります。

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