『サラバ!』を海外駐在員が読む|家族と人生について深く考えさせられる名作

本の感想

本の概要

『サラバ!』は西加奈子氏による長編小説で、第152回直木賞を受賞した代表作です。

主人公の圷歩(あくつ あゆむ)は、父親の海外赴任の影響で幼少期をイランやエジプトで過ごします。その後、日本へ帰国し、学生生活や社会人生活を送る中で、自分自身の価値観や生き方を模索していきます。

物語は主人公の成長を描く青春小説でありながら、家族、人間関係、宗教、アイデンティティ、生きる意味など幅広いテーマを扱っています。

上下巻合わせて非常に長い作品ですが、読み終えたときには主人公とともに人生を歩んだような感覚になる一冊です。

読むべき人

・海外駐在を経験している人

・海外赴任を控えている人

・帯同家族の立場を理解したい人

・人生について考えたい人

・長編小説が好きな人

・直木賞作品を読みたい人

個人の感想

私は海外で働いていることもあり、本作は非常に共感しながら読むことができました。

特に印象に残ったのは、海外赴任がもたらす独特の高揚感や非日常感です。

海外駐在が決まると、多くの人は期待と不安を抱えます。

日本では経験できない文化。

異なる価値観。

新しい仕事。

新しい人間関係。

実際に赴任してみると、毎日のように新しい発見があります。

私自身も赴任当初は、生活そのものが冒険のように感じられました。

『サラバ!』では、そのような異文化の中で生活する面白さや刺激が非常にリアルに描かれていると感じました。

一方で、この作品が本当に描いているのは海外生活そのものではなく、その影響を受ける家族の姿なのではないかと思います。

海外赴任というと、どうしても赴任する本人に注目が集まります。

しかし実際には、その影響を最も大きく受けるのは家族かもしれません。

帯同する場合、配偶者や子どもも生活環境が大きく変わります。

友人関係はゼロからのスタートになります。

言葉や文化も違います。

教育環境も変わります。

赴任する本人は仕事で忙しく、新しい環境に適応することに精一杯です。

特に赴任直後は余裕がなく、なかなか家族のことまで気が回らないものです。

しかし、家族もまた大きな不安やストレスを抱えながら生活しています。

本作を読んでいると、そのことを改めて考えさせられます。

では単身赴任なら良いのかというと、そう単純でもありません。

単身赴任の場合、家族は日本で今まで通りの生活を続けられます。

しかし今度は家族が離ればなれになります。

年に数回しか会えないこともあります。

子どもの成長を近くで見守ることができない。

家族のイベントにも参加できない。

日常の何気ない時間を共有できない。

そうした現実があります。

もちろん海外駐在には経済的なメリットもあります。

各種手当や福利厚生によって給与は大きく向上することもあります。

キャリア形成という観点でも大きな経験になります。

しかし、その一方で犠牲になるものも少なくありません。

家族との時間。

友人との時間。

慣れ親しんだ環境。

お金では測れない価値を手放すことになります。

だからこそ海外赴任は簡単な決断ではありません。

本作を読んで改めて感じたのは、海外駐在には必ずトレードオフが存在するということです。

何かを得るためには何かを失う。

その中で自分は何を大切にしたいのか。

家族は何を大切にしたいのか。

それを考え続ける必要があります。

また、本作は海外赴任だけの話ではありません。

主人公は人生を通して「自分はどう生きるべきか」を問い続けます。

周囲の評価に振り回されながらも、自分自身の価値観を探し続けます。

その姿は、多くの社会人にも重なるのではないでしょうか。

仕事、家族、お金、キャリア。

私たちもまた様々な選択を繰り返しながら生きています。

『サラバ!』は、そのような人生そのものについて考えさせてくれる作品でした。

海外駐在経験者はもちろん、人生の転機にいる人にもぜひ読んでほしい一冊です。

おすすめ度

★★★★★(5/5)

こんな人におすすめ

・海外駐在中の人

・海外赴任を控えている人

・帯同家族の立場を理解したい人

・人生について考えたい人

・長編小説が好きな人

・直木賞作品を読みたい人

『サラバ!』は海外生活を描いた小説であると同時に、自分らしい生き方を探す物語でもあります。読後には、自分自身の人生について静かに考えたくなる名作です。

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